社会保障の復活で、ブラック企業は退治できる

 ブラック企業をなくすためには、どのような政策が有効なのか。結論から言います。生活保護を受けやすくする。ズバリ、この道しかありません❗️以下、その理由を説明します。

そもそも、なぜブラック企業で働く人がいるのか。「そんなに嫌なら辞めればいいのに」という人がいますが、その通りです。違法行為まかり通る会社などさっさと辞めて、次を探せばよいのです。もし、「次」が見つからず、お金もなくなったならば、その時は、本人の意図せざる失業(非自発的失業)なのですから、何も遠慮することはなく堂々と、福祉のお世話になればいいのです。そして、社会保障を受けながら、必要に応じて職業訓練等で能力(人的資本)を高めつつ、じっくりとマトモな条件の仕事をさがせばよいのです。これこそが、社会保障の本来あるべき姿でしょう。

しかし、現実は違います。我が国の生活保護は、堂々と受給できるにはほど遠い。何しろ、生活保護の補足率が1割台の国です。申請すれば、本来貰えるはずのお金を、8割以上の人が、あえて受け取っていないのです。彼らの多くは、生活保護の対象になる人ですから、比較的貧しいはずであるにもかかわらずです。生活保護の受給が、いかに困難であるかを示す証明と言えるでしょう。

ブラック企業がのさばるのも、社会保障の弱さのせいです。所謂新自由主義者たちは、「自らの意思で働いている」ことを理由に、ブラック企業の存在を正当化します。自らの意思で働いていること自体は、多くの場合、事実ですが、彼らは、本来なければいけない社会保障が、現状、全く機能していないという特殊条件を、卑怯にも無視して議論を進めています。社会保障の機能不全は、言うまでもなく、ブラック企業を含む雇い手側に大きく有利に働きます。ゲームのルールが、「クビになっても社会保障」から「クビになったら餓死・ホームレス」に変化するのですから、当然、働く側の交渉力は下がり、労働条件もそれに従って下がります。今行われているのは、ルールが雇い手側に有利に不当に歪んでいる、不公平なゲームなのです。

もうお分かりでしょう。ブラック企業の労働者が辞めないのは、労働条件に満足しているからではなく、ブラック企業の労働条件でも(餓死やホームレスに比べれば)ましであると思っているからに過ぎません。「自らの意思で働くことを選んで」いるのは、表面的には事実ですが、このような状況を、「自由な選択の結果」と言い切ってしまって、本当にいいのでしょうか?我が国の社会保障ラインは、いつからホームレスの生活レベルまで下がってしまったのでしょうか?もちろん、よいはずありません。

我々は、本当の意味で「日本を取り戻す」必要があります。不当に歪んだルールを是正し、公正な条件下でのゲームを復活させる。たったこれだけで、多くのブラック企業労働者が救われる。同時に、現状の、社会保障から溢れてしまう人も救うこともできる。大事なのは、やるかやらないかであり、決断するのは、もちろん国民です。

格差社会―何が問題なのか (岩波新書)

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